銀幕に輝き続けた男の美学

振り返ってみると、映画の記憶というものは、特に邦画のそれは、自身の成長過程とともにあり、節目々々に、その都度、大なり小なりの影響を及ぼしているようです。

私自身で言うなら(大雑把に)中学時代=石原裕次郎、高校時代=吉永小百合、大学時代=高倉健、と分けられるでしょうか。

学業を終えて世に出る前の青春期、影響を受けていただろう、この銀幕ジャンルでの“3本柱”でしたが、11月18日、高倉健さんが悪性リンパ腫のため11月10日に死去していたことが報じられ、かなりのショックを受けました。

これより以前の1987年(昭62)7月17日、石原裕次郎さんが亡くなっており、時代の流れとともに、私の内なる“3本柱”は、ついに吉永小百合の1本だけになってしまいました。

裕ちゃんが、兄・石原慎太郎氏の芥川賞受賞作品「太陽の季節」で映画デビューした1956年(昭31)、私はまだ12歳の小学生でしたが、同年の「狂った果実」や、私が中学生になってから次々に公開された「俺は待ってるぜ」などの日活アクション路線は、不良に憧れる? 思春期の少年の心を躍らせ、興奮させられたものでした。

この時期に影響を受けたものは、まず「形」であり、私の頭は「慎太郎カット」だったし、コートの襟をを立てたり、肩にひょいとかついだり、何よりも裕ちゃんの“くわえ煙草”のカッコよさにしびれ、このあたりから私の喫煙が始まっています。

余談になりますが、私たちの世代の喫煙は、こうしたカッコよさから入ったものですが、あるとき、後輩たちと喫煙談議となり、彼らの認識は、煙草を吸うことほどカッコ悪いものはありません、ということで、かなりの温度差を感じたものでした。

吉永小百合の「キューポラのある街」(日活)が公開されたのは1962年(昭37)でした。

私は、1945年3月13日生まれの彼女とは、ほぼ同年代なのですが、この映画の中で、高度成長経済期の格差による貧しさなどをものともせず、頑張ろうね! と明日に向けて希望の瞳を輝かせる石黒ジュンは、高校2年生の吉永が演じており、それを観る私も高校2年生で、吉永小百合という女優は、もう、これからの人生を彼女とともに歩もうね、と勝手に思い込んでしまった“同志”のような存在と化してしまいました。(私は決して「サユリスト」ではありませんが・・・)

全共闘も・・・「背中の銀杏が泣いている」

・・・そして高倉健さん! の登場です。

高校時代、熱中して読みふけった本の一つに尾崎士郎著の「人生劇場」があります。新潮文庫版「青春編」から「望郷編」までの全11巻は、青春期のバイブルのようなものでした。

東映が、その「人生劇場~飛車角」(シリーズ化)を皮切りに任侠路線をスタートさせたのは1963年(昭38)でした。健さんは、ここから「忍耐」「仁義」「決意」「斬り込み」という、任侠路線における“男の美学”をスクリーンに輝かせ、日本人の心情を揺らします。

私が大学に入ったのが1965年(昭40)-。そのとき、健さんは、迫力満点の三白眼を引きつらせ「日本侠客伝」や「昭和残侠伝」で血染めの白刃を振り回し「網走番外地」では凍てつく雪原に身を躍らせていました。

その当時の大学生は、大学に入ってはみたものの・・・でした。なぜなら学園紛争のうねりは、学費の値上げ反対をターゲットに活発化しており、校内・外にはバリケードの山々が築かれていたからです。

そして、大学の権威主義を批判した東大全共闘が組織され、1969年(昭44)の東大安田講堂攻防戦へと進みます。

覚えているでしょうか。このころの東大駒場祭のポスターでしたよね。

〈とめてくれるな おっかさん 背中の銀杏が泣いている 男東大どこへ行く〉

この名文句が光ったのは-。

体制(既成)の不条理に耐え忍び、最後の最後に堪忍袋の緒を気って白刃片手に斬り込む、健さんの男気は、全共闘をもしびれさせ、言葉はただ一つ「死んでもらいます」でした。

銀幕の中の任侠路線で、健さんは〈男はこうあるべき〉を身を持って示し、示された観客は皆、ただひたすら、健さんになって映画館を出てきて、道行く人に下から視線を送ってみたりしていました。

裕ちゃんも、健さんも、これだけ多くの人々の青春の節目に影響を与えたスターは、これから出てこないような気がします。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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