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王者を空転させた李の作戦

ボクシング記者の取材ノートは、だいたい飛び散った血の跡で汚れているのが普通です。

例えばメッカ・後楽園ホール(東京)で試合を取材するとき、ベンチ式の机と椅子2列のリングサイド記者席は、スペースの余裕がなく、前列がリングに密着しています。密着度を具体的に言うと、前列に座った場合、ちょうどリングの高さが目の位置に来て見上げる形となり、ちょっと首を前傾させると額がリングの角に当たります。

従って試合が流血戦となったとき、記者たちは上から飛び散り、降りかかる血と汗を必死に防がなくてはなりません。当然、新調の背広とか白いワイシャツなどを着ていては汚しに行くようなもの。私も以前、肩に血が飛び散ったシャツのまま電車に乗り、変な目で見られたことがあります。で、ベテランの記者ほど前列になど座りたがらないし、また、血と汗の雨を防ぐには、取材ノートを広げて傘のように頭上に掲げるのが一番なのです。

(プーンサワット=手前=を下し大金星を挙げた李)
李列理

さて10月2日夜、後楽園ホールではWBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチが行われました。王者のプーンサワット・クラティンデーンジム(29=タイ)に同級14位の李冽理(28=横浜光)が挑んだ試合。プーンサワットと言えば01年6月のプロデビューからこの試合前まで42戦41勝(29KO)1敗の戦績を誇り、06年7月に1敗を喫して以降、実に4年間の試合はすべてタイトル戦(PABAスーパーバンタム級とWBA世界同級のタイトル戦&防衛戦)という強者です。

戦前の展望では誰もがプーンサワットの4度目の防衛を疑わないところでしたが、試合が始まると5回、李の有効打で王者が左まぶたをカット、リングサイドの記者席に取材ノートの傘が開き始めて展開は意外な方向に進み始めました。

世界初挑戦の李は、王者の前進、接近を予測して足を使い、正面からの接触を避けてアウトボクシングに徹します。全体的な印象としては、プーンサワットが攻めまくり、李が逃げまくるといった形です。

有効打はどちらに多かったかの見方

ボクシングの見方とは難しいもので、私などは後退してパンチを出す李より、どうしても前進して攻めまくるプーンサワットの攻勢に目が行ってしまいます。が、判定でジャッジが出した採点は、115-114、115-113、そして1人は118-110の大差をつけ、3人とも李の勝利でした。

スポニチ本紙の世界戦評論でおなじみの元世界王者・浜田剛史氏の採点も、王者が取ったラウンドは4回と10回の2ラウンドだけ。118-110で李の圧勝でした。

その根拠を浜田氏はこう説明しました。

「前に出て攻めまくったプーンサワットの攻勢点を取るか、下がりながらではあってもジャブを含めた李のクリーンヒットの数を取るか、の見方となります。攻防の中に有効打がない場合、あるいはあっても互角の場合、採点の優劣は攻める姿勢、つまり攻勢の度合いにかかってきます。が、2人の攻防の中でまず、クリーンヒットの数を見た場合、プーンサワットになく、李は良く当てていました」

なるほどねェ~。そういうものですか。

それにしてもボクシングの“先”は、なかなか思うように見通せないものです。プーンサワットがこの試合に勝って4度目の防衛に成功したとき、次戦の候補としてWBC王者・西岡利晃(帝拳)との統一戦を熱望していましたが、王者の交代でそれも白紙に戻されました。

(う~ん、ちょっぴり残念! 見たい気持ちでしたが・・・)

が、一方、新王者の李に向けて東洋太平洋同級王者・下田昭文(帝拳)の動向も興味のあるところ。このクラスの今後から目が離せなくなりそうです。

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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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