“ここ一番”の勝負の難しさ

「記録が懸かった勝負」というのは、さまざまなスポーツ・ジャンルにあって、しばしば直面するものです。

例えば、先に終了したUSPGAツアーの今季メジャー第1戦「マスターズ」(4月12日最終日、米ジョージア州オーガスタ=オーガスタ・ナショナルGC)での勝負-新旧交代劇の旗手となって優勝した21歳8カ月のジョーダン・スピース(米国)の戦いは、1打ごとに記録が懸かる、緊張を強いられるものとなりました。

通算16アンダーで最終日を迎えたスピースには、これまでの大会史上最少ストローク「通算18アンダー」(1997年にタイガー・ウッズが記録)の更新が懸かります。

結果は、17番まで6バーディー、3ボギーの通算19アンダーとしながら、最終18番でボギーを叩き、新記録はならず! タイガーと並ぶタイ記録となりました。

こうした息詰まる展開を観(み)ていて思うことは、この若武者は、年齢相応に次々にふくらんでくるだろう自分の欲望-日本的に言うなら「煩悩にのたうつ自分」をどう始末するのだろうか、ということです。

つまり、優勝はしたい、記録も取りたい、と思うのか。まず優勝したい、記録は付随するもの、と欲を抑えるのか。あるいは記録を達成すれば優勝もついてくる、と考えるのか。この3パターンは、成し遂げてしまえば大差はないかもしれませんが、その過程では心理に微妙に影響を及ぼすものでしょう。

同様のことを陸上競技の「織田記念国際」(4月19日最終日=エディオンスタジアム広島)で男子100メートルに臨んだ桐生祥秀(19=東洋大)に感じてしまいました。

力まず欲張らず、どうリラックスするか?

桐生が3月28日、米テキサス州オースティンで行われた陸上競技大会「テキサス・リレー」の男子100メートルで9秒87を出して優勝したことは、それこそ日本中の大きな話題となりました。

残念ながらこのタイムは、3・3メートルの追い風参考(2・0メートルを超える追い風があったときは公認されない)となりましたが、電気計時で日本勢初の9秒台、ということで「次」に大きな期待が懸かりました。

桐生は高校(京都・洛南高)3年時に「織田記念国際」の男子100メートルで日本歴代2位となる10秒01を出しており、これが自己ベストともなっています。

だから、初めての9秒台に対して桐生は、未公認であっても「(9秒台を)体感できた」ことに大きな価値を見い出していました。

そして、また・・・それこそ日本中が注目した「4・19」となりました。

気象条件は、肌寒く(気温20度以下)決勝時には雨で向かい風0・2メートル、さらにスタートのやり直し。私はこのレースを「NHK BS1」の中継で観ていましたが、桐生に対しては、なぜこういうときに条件の悪さが重なったりするのだろうか、とかわいそうな思いを抱いていました。

結果は、10秒40で優勝も逃す2位です。

自分の走りができなかった桐生をスポニチ本紙の担当記者は、桐生のコメントとして「体が重い。(スピードに)乗っていかない」と報じ、男子400メートル日本記録保持者の高野進氏は「力むと力が上に逃げてしまう、彼の一番悪いクセが出た」と桐生の走りを評していました。

これまでは「9秒台」を目指していた桐生が、追い風参考の未公認であっても「9秒台を体感した」ことで〈心理がどう変化するか〉というのが、今回のポイントのような気がします。

高野氏が指摘したように、力んではダメ、力まず、欲張らず、どうリラックスするか、技術論はさまざまあるでしょうが、このあたりの心理面のコントロールが、微妙に「10秒の壁」に関わって来そうです。

スポニチ本紙の桐生のコメントにある「リラックスしすぎて欲がなかった」という、心理面の紙一重の調整は、この競技の難しさもさることながら、記録が懸かった多くの勝負に共通してあるような気がします。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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