負けられない試合をどう戦うか?

31歳と26歳の戦い-。

36戦(35勝19KO1敗)と17戦(16勝10KO1敗)の激突-。

・・・が、この対決は、どちらが年上か、どちらが豊富なキャリアの持ち主か、わからないような“大人の対応”で21歳が勝利しました。

4月22日、大阪府立体育会館で行われたプロボクシングWBA世界フライ級タイトルマッチ、王者フアンカルロス・レベコ(36=アルゼンチン)に挑んだ同級3位の井岡一翔(26=井岡)です。

全体的には、攻撃と手数のレべコに対し、距離を保って単発有効打の井岡、といった展開。結果は2-0の判定で井岡の勝利。3人のジャッジは、1人が114-114のドロー、他の2人が115-113、116-113、で井岡を支持となりました。

ざっと試合を振り返ってみましょう。

井岡は立ち上がりから左ジャブを多発、慎重にまず、自分の距離を図ります。

レベコは2011年6月にWBA世界フライ級暫定王座を獲得し2階級制覇を達成。2度防衛後に正規王者となり、6度の防衛に成功、多彩な攻撃を武器とするパワフルなボクサーです。

それを裏付けるようにレべコは、序盤から手数で攻めますが、井岡のジャブと距離に中に入れず、2回には強引に入ろうとしたところに左フックを浴びて一瞬、グラつく場面もありました。井岡の優勢-。

“大人の対応”に徹した26歳

王者が手数で攻め、挑戦者はそれに付き合わず、ジャブを放って距離を取り、冷静に打ち終わりを狙って右アッパー、右ストレートを放つという展開が続きます。

レベコの右目視力が、左目に対して弱く、その計算が井岡の左ジャブには含まれていたかもしれません。

派手な打ち合い、スリリングな倒し合い、などを期待した方々には、ちょっと物足りなさが残る井岡の、見方によっては“消極的”とも思える戦い方だったかもしれません。が、井岡陣営にとっては、失敗は2度と繰り返せない、勝利最優先をこの試合に言い聞かせたのでしょう。

井岡は2012年12月、WBA世界ライトフライ級王座を獲得し、2階級制覇を達成しました。同級王座を3度防衛後にフライ級に転級。2014年5月、3階級制覇を狙ってIBF世界フライ級王者アムナト・ルエンロン(タイ)に挑戦しましたが、1-2の少差判定負けを喫しました。

プロ15戦目での初黒星を振り返って井岡は〈これまで積み重ねたものがすべて崩れ去った〉と語っています。

3階級制覇に関しては過去、叔父にあたる井岡弘樹氏が4度挑戦し失敗。井岡も初挑戦に失敗(井岡家通算5度失敗)したとあって、これはもう、井岡家の悲願ともなっていました。

こうした背景が、もう失敗は許されない、ではどう戦うか、という、井岡の慎重な戦い方につながっていたのでしょう。

中盤を終えた9回、空転が続いて焦るレべコを、井岡が「倒したい」と意気込んだところ、セコンドについた父親の井岡ジム・井岡一法会長が、意気込みにストップをかけた、といったことも伝わってきました。

とにかく、絶対に負けられない試合、そこで何をどうするか、ということなのでしょうね。つまり“大人対応”です。

勝利の瞬間、リング上の井岡は、涙を流していました。とともに目を引いたのが、12ラウンドを戦ったとはとても思えない、傷のない顔・・・。

井岡は、挫折を経て自らを追い込んだ「人生の正念場」をクレバーな、冷めた戦いで乗り越え、またひとつ幅を増したのではないかと思います。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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