「自殺点」という名の残酷な仕打ち
身を挺してクリアしたボールが、こともあろうに自陣ゴールに向かってしまったなんて!
芝生の上にうつ伏せになって、この信じ難い光景を見守るイングランド代表DFバセット(31)の胸中は、いかばかりだったでしょうか。
サッカーの女子W杯カナダ大会準決勝戦(7月1日=日本時間同2日)で、日本代表「なでしこジャパン」に1-2で敗れたイングランドです。
互いに引かない1-1の死闘。延長戦突入寸前の後半戦ロスタイム。そして・・・相手のオウンゴールによる「なでしこジャパン」の奇跡的勝利。勝者がいてそこに喜びがあれば、他方、敗者がいてそこに悲しみがあります。
スポーツで勝ち負けを競う以上、その明暗は避けられないことですが、こんな形の敗因を背負った当事者はこれから、どんな人生を送るのだろうか、と案じられてしまいます。
というのも、こうした筋書きのない試合を観(み)たとき、決まって思い出されるのが、1979年(昭54)8月の夏の甲子園「第61回全国高校野球選手権」での箕島(和歌山)vs星陵(石川)の延長18回に及んだ死闘なのです。
私はこのとき、甲子園球場の記者席で取材に当たっていましたが、途中からスコアブックへの記入も忘れ、高校生が展開させるこの激戦はいったい、何なのだろうか、と思い、あの延長16回の出来ごとを目(ま)のあたりにした際、ミスした高校生の、それからの人生を案じてしまったのです。
「なでしこジャパン」の勝利を称える一方で・・・
高校野球史に残るこの試合、あの延長16回の星陵の悪夢を記憶している方々も多いと思います。
2-2で迎えた延長16回表。星陵が1点を入れて裏の守備につきます。
星陵・堅田外司昭(としあき)投手は、簡単に2死(無走者)を取り、次打者の箕島・森川康弘外野手も1邪飛に打ち取り、やっと決着がついた・・・かに思えました。
が、ボールを追った星陵・加藤直樹一塁手が、ダッグアウト前に敷かれた人工芝にスパイクを引っかけて転倒してしまいます。命拾いした森川がこの後、本塁打を放ち同点にしたのでした。
結果は、箕島が延長18回裏に加点、サヨナラ勝ちしましたが、明暗を分けた当事者の加藤は、これから何を背負って先に進むのだろうか、ということは大いに気に懸かることとなりました。
高校野球史上〈最高の試合〉とされたこの一戦は、その後、NHKテレビが、死闘を演じた球児たちの人生を追跡した番組を制作したりしていました。
痛恨のミスを犯した加藤は、やはり、というか、苦しいひとときもあったようです。しかし、何よりも支えとなったのが、相手校・箕島を率いた尾藤公監督(故人)の励ましであり、精神的な苦境を乗り越えた後は、少年野球の指導者にもなり、野球への熱い思いを子供たちに伝えている、とのことでした。
タオルを頭からすっぽりとかぶり、号泣するバセットを仲間たちが包み込む光景が、中継するテレビの画面に映し出されます。
誰もが励まし、懸命に戦ったことを称え、ミスは仕方ない、と慰めても、当人の痛手は薄らぐことはないでしょう。
ボクシングの帝拳ジム(本田明彦会長=東京・新宿区)で長年、マネジャーを務める長野ハルさんは試合後、必ず負けたボクサーのところに顔を出して励まします。
が、周りがどう励まそうと、どんな言葉を投げかけようと、立ち直るのは本人の決断です。
バセットがまた、ピッチに立って元気に活躍する姿を見せてもらいたいものですが・・・。
〈追記=7月5日午前〉
(スポニチ本紙7月5日付から)
女子W杯準決勝の日本戦でオウンゴールで決勝点を献上したイングランドのDFバセットが「試合後は心が張り裂け、感情があふれて自制できなかった」などとそのときの心情を吐露した。(7月)3日、英BBC放送(電子版)が報じた。
バセットは1-1の後半ロスタイムに川澄のクロスに足を出したが、クリアしようとしたボールがクロスバーに当たりゴールへ。試合終了後は号泣し、チームメートに抱きかかえられた。
不運なプレーでチームは敗退し「息が出来なかった。心臓が胸から飛び出すようで、どこかに隠れたかった」と傷ついた気持ちを明かした。
(本当につらい出来ごとですね)
芝生の上にうつ伏せになって、この信じ難い光景を見守るイングランド代表DFバセット(31)の胸中は、いかばかりだったでしょうか。
サッカーの女子W杯カナダ大会準決勝戦(7月1日=日本時間同2日)で、日本代表「なでしこジャパン」に1-2で敗れたイングランドです。
互いに引かない1-1の死闘。延長戦突入寸前の後半戦ロスタイム。そして・・・相手のオウンゴールによる「なでしこジャパン」の奇跡的勝利。勝者がいてそこに喜びがあれば、他方、敗者がいてそこに悲しみがあります。
スポーツで勝ち負けを競う以上、その明暗は避けられないことですが、こんな形の敗因を背負った当事者はこれから、どんな人生を送るのだろうか、と案じられてしまいます。
というのも、こうした筋書きのない試合を観(み)たとき、決まって思い出されるのが、1979年(昭54)8月の夏の甲子園「第61回全国高校野球選手権」での箕島(和歌山)vs星陵(石川)の延長18回に及んだ死闘なのです。
私はこのとき、甲子園球場の記者席で取材に当たっていましたが、途中からスコアブックへの記入も忘れ、高校生が展開させるこの激戦はいったい、何なのだろうか、と思い、あの延長16回の出来ごとを目(ま)のあたりにした際、ミスした高校生の、それからの人生を案じてしまったのです。
「なでしこジャパン」の勝利を称える一方で・・・
高校野球史に残るこの試合、あの延長16回の星陵の悪夢を記憶している方々も多いと思います。
2-2で迎えた延長16回表。星陵が1点を入れて裏の守備につきます。
星陵・堅田外司昭(としあき)投手は、簡単に2死(無走者)を取り、次打者の箕島・森川康弘外野手も1邪飛に打ち取り、やっと決着がついた・・・かに思えました。
が、ボールを追った星陵・加藤直樹一塁手が、ダッグアウト前に敷かれた人工芝にスパイクを引っかけて転倒してしまいます。命拾いした森川がこの後、本塁打を放ち同点にしたのでした。
結果は、箕島が延長18回裏に加点、サヨナラ勝ちしましたが、明暗を分けた当事者の加藤は、これから何を背負って先に進むのだろうか、ということは大いに気に懸かることとなりました。
高校野球史上〈最高の試合〉とされたこの一戦は、その後、NHKテレビが、死闘を演じた球児たちの人生を追跡した番組を制作したりしていました。
痛恨のミスを犯した加藤は、やはり、というか、苦しいひとときもあったようです。しかし、何よりも支えとなったのが、相手校・箕島を率いた尾藤公監督(故人)の励ましであり、精神的な苦境を乗り越えた後は、少年野球の指導者にもなり、野球への熱い思いを子供たちに伝えている、とのことでした。
タオルを頭からすっぽりとかぶり、号泣するバセットを仲間たちが包み込む光景が、中継するテレビの画面に映し出されます。
誰もが励まし、懸命に戦ったことを称え、ミスは仕方ない、と慰めても、当人の痛手は薄らぐことはないでしょう。
ボクシングの帝拳ジム(本田明彦会長=東京・新宿区)で長年、マネジャーを務める長野ハルさんは試合後、必ず負けたボクサーのところに顔を出して励まします。
が、周りがどう励まそうと、どんな言葉を投げかけようと、立ち直るのは本人の決断です。
バセットがまた、ピッチに立って元気に活躍する姿を見せてもらいたいものですが・・・。
〈追記=7月5日午前〉
(スポニチ本紙7月5日付から)
女子W杯準決勝の日本戦でオウンゴールで決勝点を献上したイングランドのDFバセットが「試合後は心が張り裂け、感情があふれて自制できなかった」などとそのときの心情を吐露した。(7月)3日、英BBC放送(電子版)が報じた。
バセットは1-1の後半ロスタイムに川澄のクロスに足を出したが、クリアしようとしたボールがクロスバーに当たりゴールへ。試合終了後は号泣し、チームメートに抱きかかえられた。
不運なプレーでチームは敗退し「息が出来なかった。心臓が胸から飛び出すようで、どこかに隠れたかった」と傷ついた気持ちを明かした。
(本当につらい出来ごとですね)
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