独善的男乃着物考其ノ参

今年の夏は暑さがこたえました。人一倍、暑がりで汗かきの私は、従って4月を最後に以降、残念ながら和装から遠ざかり、6カ月を経てこのところ、やっと訪れた“らしい”季節に「かびなど生えてネーだろナ」と手入れ不足を恐れつつ、畳紙(たとうがみ)を開ける日が増えました。

ということで、久々にこの連載(注=「独善的男乃着物考」シリーズは「日常」の項目に収めています)を書いてみたくなりました。

(やっと季節到来で出番を待つ私の着物)
男の着物

旧暦の季節区分「二十四節気」による“着物の四季”では、10月は「着物の正月」とも言われ、ここから改まった気持ちで裏地をつけた袷(あわせ)をスタートさせますが、11月も近付いたこの時期、私などはまだ、原則的に9月着用の単衣(ひとえ)の方がいいか、などと迷いますから、和装にはまったくやっかいな近年の地球温暖化ではあります。

吹く風が体に巻きつけた布の間を通り抜ける心地よさは、和装ならではのもので、着物好きにはたまりません。それが秋のちょうどいい風でも、冬のちょっと冷たい風でも、寒い分には何の問題もなく、ただひたすら(私にとっては)暑くさえなければいいのです。なぜなら、着物の場合、汗をかいて体に布が貼りつく感じは、どうにも不快ですし、何よりもそうして無理をした後の処置、つまり洗濯などのわずらわしさが頭をよぎってしまうのです。

以前、紬(つむぎ)の着物で飲んでいて、着物の場合、注意しなければいけないことなのですが、袖が焼酎の壜を倒し、大量にこぼしてしまったことがありました。その着物はそれまで結構、汗を吸い込んでいたこともあり、この際、シミになる前に一度「洗い張り」に出しておこう、と呉服店に持って行きました。

絹の着物のクリーニング法のひとつである「洗い張り」は、古びた絹を蘇らせるとも言われ、長持ちさせるためにも、たまにはやっておきたい洗濯ですが、これは着物をいったん解いてしまうため、洗った後にまた、元に戻す仕立てが必要となり、その仕立て代がやたらに高いのがネックです。

古着店の活用で出費を抑える

私の場合、解き代、洗濯代、それに加えて仕立て代がそのとき確か、2万5000円必要と言われ、とてもじゃないが・・・と取りやめ、着物のドライクリーニングである「丸洗い」にとどめました。それでも代金は、ひと冬着込んだ革ジャンをクリーニングに出すくらいのものは取られました。

私が着物を着るのは、あくまで趣味の域を出ませんが、こうした洗濯代を含めて、今どきの着物に対する金額の高さは、やはり、需要の低さ、からくるものなのでしょうか。仕立て代の高さについても、だいたい今の時代、和裁ができる人が少なくなっているから、という話も聞きました。

「着物を着てみたいが、値段が高い」という声はよく聞きます。確かに基本的にオーダーメイドの着物は、購入する場合、呉服店なりを訪ね、反物を選び、採寸し、仕立ててもらう、などの作業があり、そんな面倒くささとともに、それなりの出費も覚悟をしなければならないところがあります。

が、考えてみれば、所有する着物のすべてが高い金をかけた新品である必要はなく、私などは日常、行きつけの古着店をフル活用しています。古着店の良さは、その店の経営者のセンスにもよりますが、今の時代には見られなくなった“昔着物”のいいものがしばしば、入荷されたり、古着だけではなく仕付け糸がついたままのものもたまにはあり、何よりもそれらを既製服の感覚でその場で体に合わせることができることです。

古着を購入するときの注意点はもちろん、汚れ、虫食いや煙草の火の粉が飛んだ穴、などですが、店内が暗ければ必ず、外に出て日にかざしてみることも必要です。それらがクリアされれば、あとはサイズだけです。

私は以前、銀鼠(シルバーグレー)の“ひげ紬”の羽織を古着店で見つけ、ひと目で気に入って格安(値引きもしてくれました)で購入しましたが、今、愛用のこれなどは古着店フル活用の成果といえたでしょう。


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

<羨ましい趣味人>
筆者は良い趣味をお持ちで羨ましい限りです。女性の着物姿も少ないのに男性の場合は正に極少。町では着物店は殆ど見かけませんし、扱っているのは精々デパートの一角程度です。その原因はご指摘の通り需要の低さや関わる人が減り、手間賃が高くなり敬遠されるのでしょう。早晩「洗い張り」なる用語も死語化しそうな気がします。しかし、和服の良さはサイズが合わなくなると棄ててしまうしかない洋服とは違って何回も仕立て直しが可能という点にあります。柄や色合いに飽きれば染め直しも出来ます。和装は流行の「エコ」にもピッタリで、なにより四季があり、湿気の多い我が国では合理的な衣装と言えそうです。
ところで、古書店にお世話になることが時々ありますが、和服の「古着店」の存在は知りませんでした。いかに古着であっても古本とは金額的には違い、小生は古着でも経済的に手が出そうもありません。筆者は良いものを探し求める本物の趣味人と言えますね。今後とも希少なる「本物の趣味人」を意気地を以って貫いて欲しいものです。

着物の思い出

私もやっと60代に突入し、よく小説家などの挿絵で着物のよく似合う人物の絵を見てそれなりの年代になったら、着物を着てみたいと思ったことを、思い浮かべました。着物は子供のころ正月など母親に着せてもらい窮屈な思いをした事と、思春期のころやくざ映画にはまり高倉健、鶴田浩二、安藤昇などの着流しスタイルに憧れたものでした。成人式の時に着た記憶をたどると、洋服と違いそれなりの着こなしをしないと、だらしない格好になり自然と着物にいろいろなことを学んだ思いが、なんとなく蘇りました。
私も心のゆとりを楽しめる年になれば着物姿で、蕎麦屋で熱燗でも飲みながら一杯やりたいと思います。
プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR