ある一つの見方と意見

プロボクサー・亀田興毅(28)の現役引退に関して、日ごろ、ボクシングに興味のない人たちからも「どうなの?」と聞かれました。

アンチテーゼ(否定的主張)を含めて、多くの人たちが「カメダ」という名前を知っている〈知名度の高さ〉については、俯瞰(ふかん)して見るなら、ボクシング界に貢献した、とも言えますが、では、やってきたことはどうか? を振り返ると、残念ながら、それに逆行するものだったと言えるかもしれません。

だから、私はその問いかけに「もうこれでいいと思うよ。残ったところで次にやることはないだろう」と、さほど惜しむ感情もなく答えました。

私が初めて亀田の試合を観たのは、2005年2月21日、プロ6戦目で初の東京進出となった後楽園ホールでのヨードケン・シンワンチャー(タイ)戦でした。

東都のファンへの顔見せもあったでしょうが、この試合、カメダとKOはセットや! の言葉通り、コーナーに追い込んでフックを振り回し、1回2分10秒、あっという間のKO勝利を飾りました。

私はこの夜、ボクシング界に新時代の到来か、と、亀田が巻き起こした“新しい波”に妙に感動していました。主催者発表の観客2500人。狭い後楽園ホールでこの人数が集まると何が起きるかというと-。

まず、ホールに上がるエレベーターに待ちの連続で簡単に乗れない。やっと乗ってもロビーがいっぱいで降りられない。強引に前進すればド突かれる。場内も立見席から通路まで人があふれ、殺気立つ人々の小競り合いも一つや二つでは済まない、という事態となります。

何よりも、目を疑う思いだったのは、入場の際に客席を埋めた女子中・高校生が一斉に立ち上がって携帯電話のカメラを向けたことだったでしょうか。

実力の追及より人気の追及を選んだ亀田流

こういう光景は、ボクシングの試合では過去、まったくなかったことであり、これはボクシング界の新しい波、父子が世界王者という夢に向かって一丸となっている姿に新しい観客層が動いた、ということに私は、不思議な感動を覚えていたのでした。

・・・が、ボクシングという競技の本質を考えたとき、ここで大事なことに気付かなければいけません。本当にボクシングを愛する人たちは、こうしたミーハー的光景を最も嫌がることを-。

案の定、KOの山を築き、快進撃を続けても、実績が不明なタイ人選手ら、戦いやすい相手ばかりを選ぶマッチメークに「亀田は本当に強いのか?」という疑問符が常につきまとう連戦連勝となっていきます。つまり、強さの追及、より、人気の追及、のほうを優先した亀田の道です。

結局、この道が、最後まで亀田の成長を阻んだと言えるのではないでしょうか。

初の世界王座を奪取したランダエダ(ベネズエラ)戦で物議をかもし、日本初の世界3階級制覇を達成しても、さほどの評価は得られず、引導を渡された現役最後の河野公平(ワタナベ)戦は、逃げずに打ち合ったことで試合を面白くしたものの、こういう試合には完敗するという結果です。

時代は流れ、世界の世界王者たちは、単なる防衛の積み重ねではなく、誰とどういう戦い方をしてどういう勝ち方をしたか、が評価されるようになってきました。全階級を通して誰が強いかを問う「PFPランキング」などが注目されるようになってきたのも、その表れでしょう。

そうした流れから見れば、一世を風靡(ふうび)したかもしれない“亀田流”は、やはり、ボクシングでは〈本線から外れていたなァ〉と思います。

が、エンターテインメント性に関して言うなら、捨てがたいところがあり、今後はその道に進出してくるのではないでしょうか。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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