トップを維持することの難しさ

「(辞めるのは)まだ惜しい!」という声が多く聞かれた中、女子サッカー界の“レジェンド”澤穂希(37=INAC神戸)が現役引退を表明しました。

目下、熱戦を展開中の「皇后杯全日本女子サッカー選手権」が、澤の現役最後の舞台ですが、澤に最高の花道を! とイレブンが一丸となった勝利で決勝(12月27日=対新潟)に進んだINAC神戸にあって、澤のプレーと冴えわたる判断力は、やはり、まだ惜しい! を十分に感じさせるものがありました。

12月17日に行った引退会見の席上、澤は引退について「一番の理由は、心と体が一致してトップレベルで戦うことが難しくなったと感じたから」と明かしました。

そして・・・「悔いのない、やり切った、最高のサッカー人生でした」と続けたのは、この“人生最大の決断”を〈これでいいのだ〉と自分に納得させるものであったかもしれません。

第一線で活躍するスポーツ選手に、いつかは訪れる、避けては通れない難題が〈引き際の決断〉でしょう。

これまで数多くの一線級選手が、この難題にぶつかり、人生最大の決断を自分に課してきました。

体力の限界、気力の衰え、後進の台頭・・・自分を取り巻くさまざまな情勢があり、岐路に立った自分を冷ややかに見つめられる、もう一人の自分がいないと、なかなか踏み切れるものではないだろう、と思います。

2人のレジェンドは何を語り合ったのか

12月23日午後、テレビ(日本テレビ)の中継でしたが、東京・代々木第2体育館で行われていたレスリングの全日本選手権最終日の模様を観ました。

引退を表明した37歳の澤と、こちらはまだ、現役まっただ中ですが、33歳の吉田沙保里(ALSOK)の、体を張った戦いがダブります。

出場した女子55キロ級の準決勝戦-。

吉田は、昨年の同級世界女王の浜田千穂(23=クリナップ)にタックルされ、ひっくり返されて“あわやフォール!”のピンチに追い込まれました。

最後は逃げ切って「6-3」の勝利。決勝戦では、菅原ひかり(22=至学館大)を10-0の大差でテクニカルフォール勝ちし、同大会通算13度目の優勝を飾りました。

吉田は、この勝利で来年のリオ五輪代表の座を獲得。同五輪で実に4大会連続優勝を目指すことになりましたが、澤が口にした引退理由とともに、長年にわたってトップレベルを維持することがいかに難しいことかを、吉田が当たり前のように成し遂げた優勝に感じました。

五輪3連覇を含めて16大会連続世界一の「霊長類最強女子」なのだから、全日本レベルなど楽勝だろう、という見方もあります。

・・・が、吉田は、9月の世界選手権前から、練習で息が上がる状態が続き、検査の結果「ぜん息」と診断されています。加えて、なかなか治らない肩の痛み、さらに準決勝の対浜田戦で見られた、相手選手の“打倒・吉田!”の気概と徹底研究。浜田は試合後、あともう少し、勝てると思った、と悔しがっています。

追う立場より、追われる立場のほうが、厳しいに決まっています。プロボクシングがそうであるように格闘技の世界は、頂点に立つと、その直後から世界中の刺客が打倒! を目指して研究を開始します。

吉田にしても、幼少時に父親から伝授された「高速タックル」が“伝家の宝刀”であっても、警戒され、研究されれば、そこから再び、進化しなければ、宝刀でなくなってしまいます。それが最近の状況-。

全日本レベルであっても、世界レベルであっても、それは変わらないでしょう。

吉田は試合後、仲の良い澤らと「クリスマス女子会」に出掛けたそうですが、さて、その席で2人のレジェンドは、何を語り合ったことでしょうか。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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