いかにも日本人的な“滅私奉公”劇

若き大学生たちの〈滅私奉公劇〉は、青学大の2連覇達成で幕を閉じました。

新春の箱根路を舞台に展開された恒例の「東京・箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」です。

昨年初優勝を飾った青学大は、今年も1月2日の往路(東京・大手町~箱根・芦ノ湖=5区間107・5キロ)、同3日の復路(箱根・芦ノ湖~東京・大手町=5区間109・6キロ)とも、ピンチなしの独走状態を築き、危なげのない連覇を成し遂げました。

この箱根駅伝は、1920年(大9)に第1回大会が開催され、今年で第92回を迎えています。

私が初めてこの大会の取材に当たったのは、スポニチ本紙に入社して2年目のとき、1970年(昭45)の第46回大会でした。

このころは、中大の6連覇が終わり、1969年(昭44)に初優勝した日体大の連覇が始まった年です。

レースに接して抱いた印象は〈これは“滅私奉公劇”だなァ〉といったものでした。

なぜなら-。

〈滅私奉公〉=「〈滅私〉私欲・私情を捨てること。個人の利害を考えないこと。〈奉公〉朝廷や国家社会のために力を尽くすこと」(広辞苑)

タスキに懸けた若者たちの戦い

封建時代にあった〈主君のために・・・〉という“滅私奉公”の形とは、もちろん違いますが、広義に解釈した場合、ただひたすら母校のために、チームのために、私利私欲を捨てて〈タスキをつなぐ〉という滅私の健気(けなげ)さが、このレースにあったからです。

情緒的には、背景に新春の箱根路往復というロマンがあり、それとは対照的に1区間だいたい20キロ前後、1人約1時間強を走ってタスキをつなぐという、過酷な長丁場ゆえにときにしてトラブルに見舞われがちなスリルもあり、それが観る側の手に汗を握らせるゆえんともなっているのでしょう。

実際、私が初めて取材に当たった時代など、走る選手の後ろに監督が乗ったジープがピタリとつき、叱咤激励によって選手が“走らされている”といった情景が、まだ見られたものでした。

概して陸上競技のマラソンなど長距離レースは“個人競技”でしょう。途中で体調が悪くなったりしたときなど、続けるか辞めるか、の判断・決断は個人にあります。

が、駅伝はどうかというと、走者たちはひとたびタスキを背負うと、その瞬間から、本来の個人競技が団体競技に変わります。母校のために、チームのために、自分がどうなろうと、滅私の精神でタスキをつなごうとします。

しかも・・・一般的には昨今、そうした精神が希薄になったと言われる大学生の若者たちが、です。

そういえば、ラグビーのW杯イングランド大会で活躍した日本代表により、ラグビー人気が一気に高まったのは、やはりこの競技が One for All All for One に代表されるように、滅私の精神に支えられているから、ということもありました。

ちなみに一人脚光を浴びた形のFB五郎丸歩は、皆の中の一人、の意識で目立つことを嫌っていました。

箱根駅伝にしろ、見直されたラグビー人気にしろ、やっていることは、いかにも日本人的であり、日本人は、そうした戦いの姿勢が大好きなのだと思います。

平成世代の若者たちに、滅私の精神など意識の外でしょうが、歯を食いしばってタスキをつなぐ彼らを、沿道のファンはそういう目で見て拍手を送り、ときには涙ぐむのです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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