映画「舞踏会の手帖」を観て・・・

映画愛好家たちの集まりで上映されたジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「舞踏会の手帖」を観(み)てきました。

1937年公開(日本では1938年公開)のフランス映画です。

〈オムニバス(Omnibus)〉=「(もとラテン語で)『万人向き』の意から①乗合自動車、バス②映画などで、いくつかの短編を並べて、全体で一つの作品にしたもの」(広辞苑)

終わった後の全体的な印象としては、まず、この映画の構成~オムニバス形式の映画がいつから始まったのかは分かりませんが~この形式を取ったことにより、2時間超え(144分)の長い上映時間が、不必要を省いた“いいテンポ”となっており、ダラダラとした間延びを感じないことでした。この時代のものにしては・・・さすがデュヴィヴィエ監督といったところでしょうか。

物語は、北イタリアのコモ湖畔に建つ豪邸に住む36歳の未亡人クリスティーヌ(マリー・ベル)が、家の中を整理しているときに古ぼけた手帳を見つけるところから始まります。

手帳には、クリスティーヌが16歳で舞踏会にデビューしたとき、言い寄って愛をささやいた10人の男の名が記されています。

あれから20年-。彼らを訪ねてみようと旅に出たクリスティーヌの胸中には、36歳で夫に先立たれ、これから先の人生への“もしかしたら・・・”という希望があったことでしょう。

しかし、10人のうち、2人が他界、残る8人を訪ねたクリスティーヌの前に立ちふさがった現実は・・・。

あの日、クリスティーヌを愛した一人っ子の内気な青年ジョルジュは、彼女の結婚を知って自殺、ジョルジュの母親(フランソワーズ・ロゼー)は、それが原因で気がふれていました。

〈凍てつける人気なき広い公園に 影二つ今し過ぎ行きぬ・・・〉-。
かつて文学少年だったピエール(ルイ・ジューヴェ)は、キャバレーを経営するギャングのボスになっており、クリスティーヌの目の前で警察にしょっ引かれて行きました。ああ-。

全編に漂う人生の哀感

あのアラン(アリー・ボール)が! 作曲家を志望していた彼は、神父になっており、肥満体を揺さぶりつつ、言うことを聞かない合唱団の少年たちに手を焼く日々です。

喧嘩っ早かったが、いつも颯爽としていた青年のエリック(ピエール・リシャール・ウィルム)は、山岳ガイドになっており、再会に話が弾んで希望が持てたものの、雪崩の発生による事故で現場にすっ飛んでいきました。

訪ねた町中が沸いていたのは、政治家を目指していたフランソワ(レイ・ミユ)が、今は田舎町の町長となり、結婚式が行われるためでした。

医者を目指していた情熱的なティエリー(ピエール・ブランシャール)は、医者にはなっていましたが、堕胎で稼ぐ裏稼業、精神も病んでいました。

そして7人目。訪ねたファビアン(フェルナンデル)は、美容師となっており、得意の手品も健在で相変わらずの人気でした。が、舞踏会に誘われ、行った先は、かつての舞踏会とは比較にならないほどの安手のものでクリスティーヌを落胆させました。

「希望の旅」は「失望の旅」となって帰宅したクリスティーヌは、最後の一人、彼女のほうが恋したジェラールが、自宅のある湖畔の対岸に住んでいることを知ります。訪ねると彼はすでに他界しており、遺児(ロベール・リナン)を養子として引き取り、母親としてやっと、新しい人生の第一歩を踏み出せることになったのです。

・・・いやぁ、どうでしょうか、この物語は・・・。

人生の哀感というか、悲哀というか、とにかく“哀”なくしては語れない展開ですね。

あの名作「望郷」に代表されるディヴィヴィエ監督は、ペシミスト(悲観論者)と評され、また「アンハッーピエンド」の名手とも評されたそうです。

であるなら、この「舞踏会の手帖」など、ディヴィヴィエ監督の面目躍如といったところでしょうか。

私は、この映画を見ながら、ディヴィヴィエ監督に「君の今はどうだい」と問いかけられ、また、ヒロインのマリー・ベルからも「訪ねて行った私を受け止められますか?」と“今”を正されているような、妙な気分になっていました。

それにしても・・・フランス映画は、というより、ディヴィヴィエ監督の作品は、といったほうがいいでしょうか、どこかウエットな日本人の感性に合ったところがあり、日本的だなァ、という感想を持ちました。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR