“ゴルフの神様”の過酷な試練

女子プロゴルフ界の、かつての第一人者・森口祐子(60)が以前、話してくれた言葉が思い出されました。

〈ゴルフは、いろいろな意味で自分が試されるゲームなんですね。昔の私は、365日が自分の日でなくては嫌だったけど、今はやっと、素直に向き合えるようになりました〉

何が何でも前へ! の血気盛んだった若き日から、多くの経験を積み、あらゆる状況を静かに受け入れられるようになって〈調和することの強さ〉を知った今-。

メンタル・ゲームのゴルフは、一打一打が、ああしよう、こうしたい、という“欲”との戦いとなります。が、その欲を抑えて自然体となり、心が調和に向かったとき、その先にはうれしいご褒美が待っているのでしょう。

自分の心次第でどうにでも変わるのがゴルフとはいえ、ゴルフの神様は、本当に意地悪だと思います。

JLPGAツアーの今季第3戦「Tポイント・レディース」(3月20日最終日、鹿児島県始良市=鹿児島高牧CC)を制した大江香織(25=アルパイン)に課した厳しい試練です。

最終日の優勝争い。大江は、通算8アンダーで後続に2打差をつけて迎えた18番(パー4)の第1打を右に大きく曲げてしまい、斜面を転がったボールは、崖下の木の根元に止まるというトラブルとなってしまいました。

さまざまな選択肢の中で強行策を選んだ大江は、7Iで脱出を試みましたが、これが強すぎてファエウエーを横切り、左サイドの池に入ってしまいます。

欲望と調和の狭間で・・・

振り返って「アンプレアブルは考えなかった。池に入るかもしれないということは考えていた」という大江ですが、ここまでのプレーには、やはり、欲があります。

大江にとっての優勝は、2012年4月の「フジサンケイ・レディース」以来、約4年ぶり、待望の2勝目、そのチャンスが目の前にあれば、無欲になどなれるはずもないでしょう。

が、第1打を曲げ、第2打を池に入れたことで大江の心理に変化が生じます。

1罰打を加え、ドロップしてグリーンを狙う第4打は、ピンまで72ヤード、56度のウエッジを手に大江は冷静を自分に言い聞かせます。

1パットならボギーで優勝。2パットならダブルボギーでプレーオフ。今ここでやるべきことは〈グリーンに乗せることだけだ〉と-。

欲が消え、置かれた状況との調和が見えたところでゴルフの神様がやっと微笑みました。

思い切り振った勝負の一打は、バックスピンがかかってピン右横1メートルにピタリ! です。

これを大江は「震えながら」「気を失いそうになりながら」打って沈め、逃げて行きそうになった優勝を手繰り寄せました。

今季を迎えるに当たり、大江は深刻な問題を抱えていました。

中・長尺パターの〈アンカリング〉が禁止されたことで、長尺パターを愛用していた大江は困惑、悩み「2勝目を挙げる日はもう来ない。私はもう終わった」とさえ思ったといいます。

アンカリングの禁止は、中・長尺パターの使用を禁止するものではなく、中尺なら腹部など、長尺なら胸部などにアンカーポイント(支点)をつくってストロークするな、というルールです。

試行錯誤の末に長尺を中尺に代え、ルール違反にならないような独特の形をつくった大江ですが、そうした出来ごとも、森口に言わせれば〈いろいろな意味で自分が試されている〉とうことなのでしょう。

さまざまな困難を乗り切り、やっと2勝目にたどり着いた大江は、しかし、次に向けてきっと“何か”をつかんだ優勝になったことと思います。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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