自分で自分に“終わり”を告げるとき

故事に「栄枯盛衰 世の流れ」とあります。

〈盛んなとき〉と〈衰えのとき〉とがあるのは人生の常~それは特にスポーツ界で顕著です。

寂しいことですが、この4月、スポーツ各界にそれぞれ、一時代を築いたトップ・アスリートたちの引退が数多くありました。

その1〉は、五輪組の競泳男子平泳ぎの北島康介(33=日本コカ・コーラ)と卓球女子の平野早矢香(31=ミキハウス)です。

北島は、2000年シドニーから04年アテネ、08年北京、12年ロンドン、の各五輪に出場。アテネ、北京では2大会連続して2冠を達成する活躍を演じました。

今夏のリオ五輪代表選考会を兼ねた先の日本選手権では、5大会連続の五輪出場を懸けて全力を傾けましたが、100、200とも五輪切符を逃し、現役引退を表明。

その理由を-

ボクがボクらしく、一番興奮できるのがオリンピック。ボクに残された道は、もうそこしかなかった

-として“真剣勝負”に終止符を打ちました。

12年ロンドン五輪の卓球女子団体で銀メダルを獲得、日本代表チームを牽引した平野は、リオ五輪出場を逃し、北島同様に現役引退を決意しています。

私は頑固で中途半端なことが出来ない。今、自分が目標とするレベルに行くのは難しい

平野は、引退の理由をそう語りました。

北島にしても平野にしても〈迷う自分を始末する勇気〉を出すまでには、相当の時間を要したことでしょうが、その決断には、五輪というアマ・スポーツの最高峰で戦うことへの矜持、戦えなくなったらどうするか? という“引き方の潔さ”が感じられます。

その2〉は、プロゴルフ界の“レジェンド”トム・ワトソン(66=米国)の憂鬱です。

目指すレベルにいられるか-の逡巡

4月10日最終日のUSPGAツアーの今季メジャー第1戦「マスターズ」(米ジョージア州オーガスタ=オーガスタ・ナショナルGC)を最後にワトソンは「マスターズ出場」に別れを告げました。

第1日74、第2日78。予選ラウンド通算8オーバーでカットラインに2打及ばず予選落ちして、マスターズの最後の戦いを終えたワトソンは、こう語りました。

果たして今、自分がこのコースでプレーすることが許されるのかどうか。マスターズ・チャンピオンが、予選通過を目指すなんて、もう潮どきと思った

マスターズには、今大会で43度目の出場。1977年、81年の2度、優勝していますが、今、ワトソンは痛感します。

最終18番(465ヤード、パー4)ホール。若い選手たちが第2打、7~8Iで打っていくのにワトソンが手にするのは5W、状況によっては3Wもありました。

ここに自分の居場所はもうないな

これも“無常”な時代の流れというものでしょうか。

そして・・・〈その3〉は、プロボクシング界の“パウンド・フォー・パウンド”でファン魅了したマニー“パックマン”パッキャオ(37=フィリピン)の現役引退です。

パッキャオは4月9日(日本時間同10日)、米ネバダ州ラスベガスのMGMグランド・ガーデンアリーナでティモシー・ブラッドリー(32=米国)と対戦。最後の66戦目を3-1判定の完勝で飾りました。

ブラッドリーとは、第1戦(2012年6月9日=ブラッドリーの判定勝ち)、第2戦(2014年4月12日=パッキャオの判定勝ち)を経て今回がラバーマッチ、3度目の決着戦、がパッキャオ最終章のコンセプトでした。

周囲が期待したKO決着こそありませんでしたが、7回と9回にダウンを奪うなど、3人のジャッジは、いずれも116-110とパッキャオを支持。階級を超えて戦い続け、世界6階級を制覇した攻撃的ボクシングは健在で観客の多くは“まだやれるのに・・・”の印象を持っただろう内容でした。

試合後のインタビューで“今後”を聞かれたパッキャオは「フィジカルは続けられる。が、フィリピン国民のためにボクシングは辞める」と答えました。

現在、下院議員として政界に身を置くパッキャオは今後、上院議員も視野に入れて政治活動に力を入れるようです。

体力の限界、気力の衰え、後進の台頭・・・さまざまな理由で引退の岐路に立つ一線級選手たちの〈引き際の決断〉には、それぞれが極限の戦いを経てきた自分へ、自分自身で終わりを告げる美学が感じられます。

それが感動的でもあります。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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