「ベテランの経験」vs「若手の勢い」

MLB「マーリンズ」の外野手・イチローが、5打数4安打の固め打ちで打率を4割台に乗せた5月23日(日本時間同24日)、国内では、陸上男子ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)が、選手復帰の意思を表明する、という出来事がありました。

イチロー42歳。室伏41歳。

イチローは、5月21日(日本時間同22日)のナショナルズ戦で4の4。同22日(日本時間同23日)のナショナルズ戦でも4の2。3日間で実に10安打を放つという、年齢を超えた活躍を演じ、世の中年層に勇気を与えました。

一方、室伏は、リオ五輪の代表選考会を兼ねた「日本選手権」(愛知・名古屋=6月24日~26日)への出場を表明しました。

2004年アテネ五輪で金、2012年ロンドン五輪で銅、の室伏は、2014年の日本選手権を最後に「役割を果たした」と競技から離れており、復帰すれば2年ぶりとなります。

今夏のリオ五輪を経て2020年には東京五輪が開催されるとあって、スポーツ各界には続々と若い力が台頭しています。

躍進する“15歳パワー”の代表的存在に競泳女子のリオ五輪代表・池江璃花子(ルネサンス亀戸)がいますが、ゴルフ界でも先の国内男子ツアー「関西オープン」(和歌山県橋本市=橋本CC)第1日に「67」(パー71)をマークして飛び出した14歳の中学3年生アマ・三田真弘(岡山・京山中)が目を引きました。

価値観の多様化と既成の打破、多くの可能性を秘める平成社会は、決まり切ったことではなく、こうした〈ベテランの経験〉と〈若手の勢い〉が同居しつつ、切磋琢磨し合う傾向が感じられます。

切磋琢磨し合う二つの力

では実際、この〈ベテランの経験〉と〈若手の勢い〉という、どちらも侮れない2つの力は、どちらが優勢なのでしょうか。

もう、だいぶ前の出来事ですが、2002年4月、格闘家の“グレイシー柔術”ヒクソン・グレイシー(ブラジル)が、自身の写真集を発行し、PRのために来日したことがありました。

1959年11月21日生まれ。2000年5月26日の「コロシアム2000」(東京ドーム)で船木誠勝(パンクラス=当時)を裸締めで失神させたときが40歳。2002年に来日したときが42歳。

このとき、宿泊先の「ホテル椿山荘東京」で単独インタビューする機会を得た私は、真っ先に「20代のころと今とでは、どちらに強さを感じますか?」という質問をしたことを思い出します。

ヒクソンは、ちょっと考えた後、あの思慮深い顔で言いました。

多分、今のほうが強いと思う。確かにときを経て今、あのころの若さや勢いというものを失った。が、その分、経験を積んだ。勢いには、先が見えないところがあるが、経験は、その先が見えるからね。これは大きいと思う

つまり、勝負のやりとりの中、自分にいいことばかりは決してないが、悪い体勢にあって、こうすればああなる、と先を読めるようになるのは経験の積み重ねであり、良い体勢に持ち込むための引き出しが増えるのも経験のたまものなのだ、とヒクソンは話しました。

一時代を築いた一線級の選手が、引退を決意する過程には、体力の限界、気力の衰え、後進の台頭・・・などさまざまな理由があります。

肌を直接合わせて駆け引きを繰り広げる総合格闘技と一般のスポーツとでは、当然違いがあり、力尽きて引退した競泳男子平泳ぎの北島康介氏のように、ヒクソンの指摘することが必ずしも当てはまるとは言えないところもあるでしょう。

が、イチローのように、培ったハイレベルの技術を生かすベテランの経験、には“さすが!”と思わせるものがあり、勢いで突っ走る若手への刺激剤となってもらいたいものですね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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