映画「ハリーとトント」に観る高齢者像

以前、週1本を任されていたスポニチ本紙のコラムにこんなことを書いたことがありました。

全文は省略しますが、抜粋すると-

〈(略)ここ数年の高齢者増。総務庁統計局の資料には、65歳以上の人口が2000万人を突破したとある。高齢化社会から高齢社会への移行が、スウェーデン85年、英国45年に対し、日本は25年という急激さが対応の慌ただしさを生んでいる。4人に1人が65歳以上となる21世紀・・・(略)〉

-といった内容です。

2000年(平12)4月の執筆。20世紀最後の年となって世の中には、そういう傾向が急激に起きていたのでしょう。ちなみに資料(国勢調査の結果)では、日本は1970年(昭45)に高齢化社会、1995年(平7)に高齢社会、2007年(平19)に“超”高齢社会になった、としています。

それから16年を経てこのほど、総務省が発表した平成27年国勢調査の「抽出速報」で、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が、過去最高となる「26・7%」に達したことが判明。1920年(大9)の国勢調査開始以来、初めて高齢者が「25%」を超え、4人に1人を超えたことが明らかになりました。

少子高齢化の傾向が、ますます顕著になり、社会の構造も変化を余儀なくされそうな現象といえるでしょうか。

そんな折、映画好きの友人Oに誘われて先日、懐かしの名画を上映する〈午前十時の映画祭7〉に出向き、ポール・マザースキー監督の米国映画「ハリーとトント(Harry and Tont)」(1974年8月公開=日本公開1975年12月)を観(み)てきました。

少子高齢化の世の中で・・・

ニューヨークの自宅アパートで愛猫トントと暮らす72歳の独居老人ハリー(アート・カーニー)はある日、区画整理のために強制的にアパートから追い出されてしまいます。

妻に先立たれ、3人の息子たちは既に独立しています。ハリーはひとまず、長男の家に身を寄せますが、どうにも居心地が悪く、娘のシャーリー(エレン・バースティン)が住むシカゴに行こうと決めます。

映画は、老人と老猫トント~トントも11歳、人間なら77歳~との“老・老コンビ”の旅を描いた〈ロード・ムービー〉が骨子となっています。

当初は、飛行機での移動を予定しますが、トントがネックとなって取りやめとなり、バスに変更。が、これもトントの用便のためにバスを止めることになってしまい、運転手は、こりゃ付き合い切れない! と置き去りにして発車してしまいます。

ハリーは仕方なく中古車を買い、自らの運転で旅を続け、道中、さまざまな人々との出会いと別れを繰り返します。

マザースキー監督の手法に変な駆け引きもスリルもなく、ただ淡々と旅をする老人と、そこで出会う、コミューンへ行くという若い娘とか、色っぽい娼婦とか、ハリーの初恋の相手だった元ダンサーで今はもう介護施設に入っていて記憶が定かでない老女だとか、との出会いと交流が描かれます。

そうした展開にあって読み取れるのは、72歳の老人が、刺激のないマンネリ的な日常(アパートでの一人暮らし)から放り出されて得た、刺激にあふれた非日常(冒険的な旅)とでもいえるでしょうか。

現実に置き換えて、72歳の老人が、こうした行動を起こすためには、まず①健康であること、次に②経済的に多少の余裕があること、が2大要素となるでしょう。

もう一つ、映画の中のハリーに見習うべきは、スケジュールが組まれない旅の中でさまざまな人と出会うという柔軟性が求められる状況にあっても、世の中に迎合しない頑固さや自分のライフスタイルを崩さない美学が貫かれていることです。

トントは最後に寿命を全うして死に、ハリーもいずれはそうなる日が来るわけですが、映画の中ではハリーが、たどりついた西海岸の町で元気な日々を送っている姿が映し出されていました。

“超”高齢社会となった日本の高齢者が、これからどんな人生を過ごすかはさまざまでしょうが、ハリーの元気を支える原動力になったに違いない〈刺激にあふれた非日常〉的体験は、一つの参考になりそうです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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