“痛恨の1打”の裏にあるものは?

リオ五輪出場権を逃した渡辺彩香(22=大東建託)の〈痛恨の1打〉は、ゴルフというメンタル・ゲームの怖さ、メンタル面が揺れるとこうなる、という、このゲームの構造の奥深さをつくづく感じさせる出来ごととなりました。

7月10日(日本時間同11日)に終了したUSLPGAツアーのメジャー第3戦「全米女子オープン」(米カリフォルニア州サンマーティン=コルデバレーGC)での悪夢です。

通算イーブンパーの20位でスタートした最終日。通算2オーバーで最終18番(528ヤード・パー5)を迎えた渡辺の第1打は、フェアウエーをキープしています。ピンまで残り220ヤード。ここで渡辺は、何を考えたでしょうか。

大会前の世界ランクは、大山志保(39=大和ハウス工業)が42位、渡辺が46位。今大会予選落ちした大山を渡辺が抜いて、2番手に浮上するには、関係者の試算では〈31位以上〉と見込まれていました。

といっても他選手の動向もあること。明確な順位は把握できません。最終ホールをパーで収めれば「ギリギリかな?」しかし「ちょっとの差で(出場権を)逃すかもしれない。やっぱり、バーディーかな」-。

渡辺の心は揺れ、第2打地点、残り220ヤードは、ロングヒッターの渡辺ならオン可能な距離でありながら、一度手にしたウッドをやめてアイアンに替え、レイアップを選択します。

この結果は、ピンまで残り65ヤードの第3打、ウエッジでのアプローチがショートして池ポチャ。5オン2パットのダブルボギーを叩き、すべてが水の泡となってしまいました。

原因は揺れ動く心にあった!

不動のトッププロだったアニカ・ソレンスタム(引退)やスウェーデン代表チームのコーチを務め、宮里藍が信頼するメンタル・アドバイザーでもあるピア・ニールソン氏は、自著「ゴルフ『ビジョン54』の哲学」で冒頭、こんな記述を掲載しています。

〈パティ・シーハン(注=USLPGA殿堂入りの元トッププロ)は、トーナメントのパー5の最終ホールで、第2打をウォーターハザードの向こうのグリーンへフェアウエーウッドで打とうとしていた。勝ち抜くにはバーディーが不可欠で、できればイーグルを取っておきたいところだった〉

状況といい心理といい、何やら渡辺と似ていますね。この結果はどうなったでしょうか。

〈(略)最悪のスイングでボールの頭を叩いてしまった。ボールがフェアウエーでバウンドし、グリーン手前のクリークに入ると、シーハンは優勝の可能性が潰えたことを悟った〉

この痛恨のミスを、ニールソン氏は、技術のミスではなく、ショットを打つ前の“ためらい”にあったとしています。

〈シーハンは当初、フェアウエーウッドに手を添えたが、キャディにアイアンを手渡され、それからまたフェアウエーウッドに持ち替えた。ショットに迷いが生じたせいで、その1打に集中できなかった。不十分な思考が不十分なスイングを生んだのだ〉

渡辺の第3打のミスは、あるいは第2打、フェアウエーウッド手にしながら迷ったところに伏線があり、確実にリオ五輪出場権を得るための安全圏内となるだろうバーディーを取るためにレイアップしたことが裏目に出てしまったと言えるかもしれません。

ニールソン氏の言葉を借りれば、思考(それも不十分な)ばかりが先に立ち、その1打に集中できなかった、ということになるでしょうか。

渡辺の試合後の悔し涙は、まだまだ経験不足、重圧に屈してしまう若さを感じさせました。

涙をムダにしないためにも次、はっきりと見えた課題を乗り越え、幅を広げてももらいたいものですね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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