「銅5」のあと会心の「金1」

リオ五輪の柔道会場は、最高の盛り上がり状態にあるようでした。

8月9日午前5時-。

その時間、このところ習慣的になっている、枕元に置いてあるラジオのスイッチを入れると、そのラジオを揺るがさんばかりに伝わってくる大歓声は、柔道女子57キロ級を制して地元ブラジルに初の柔道金メダルをもたらしたR・シウバの健闘を称えるものでした。

その一方で優勝を逃し3位決定戦に回って勝ち、銅メダルに甘んじた前回ロンドン五輪金メダリストの松本薫(ベネシード)・・・。

ああ、また銅か。女子48キロ級・近藤亜美(三井住友海上)、同52キロ級・中村美里(同)、男子60キロ級・高藤直寿(パーク24)、同66キロ級・海老沼匡(同)と、いずれも銅が続いて松本も! 

銅は銅でそれは大したことなのですが、選手に笑顔がなく、そろってうつむき、残念、悔しい、などの言葉を口にするものですから、観(み)る側も、ああ残念! と悔しい気持ちになってしまいます。

それも“お家芸”としてのプライドがあり、ロンドン五輪で男女合わせて金1個だけとなった惨敗意識が、必要以上に“金でなくてはダメ”の気持ちを生んでいるのでしょう。

大歓声がいつまでもやまない中、実況を続けるアナウンサーが怒鳴ります。さあ、次は男子73キロ級決勝戦、ニッポンの大野選手が金に挑みます! と-。

オッ、やっとチャンスが来たか。では・・・と私は、起き上がり、居間に移ってテレビのスイッチを入れました。

日本柔道勢に弾みをつける快挙!

日本時間午前5時27分、決勝戦開始。さまざまな、目には見えないまったくさまざまな重圧だったでしょうが、それを背負ってタタミに上がった大野将平(24=旭化成)の相手はアゼルバイジャンのルスタム・オルジョイ(24)です。

大野が攻めます。1分半を過ぎ、右で奥襟をつかむと体を寄せて内股(技あり)で先手。これで動きが激しくなったオルジョイでしたが、大野は慌てず騒がず、例のポーカーフェースを崩さず、冷静に捌(さば)きながら、大外刈り、内股、と技を出し続けます。

そして・・・決着のときは、3分過ぎでした。一気に体を寄せて押し込みながら、右足を相手の右足にカギ状にからませます。たまらず背中から倒れるオルジョイ。やってくれました! 渾身の小内刈り、1本! 

男女計5戦、銅メダルが続いた後、6戦目にして待望の金メダルを、男子では2大会ぶりとなる金メダルを、日本柔道勢にもたらした大野の、五輪初舞台での快挙でした。

大野がテレビのインタビューに答えます。

うれしいです。内容的には満足ではないが・・・柔道の“強さと美しさ”を観ている人に伝えられたのではないかと思います

そしてこう続けました。

プレッシャーも大きかった。(金を)獲って当たり前の声が多く聞かれていたし、当たり前のことを当たり前にやることの難しさを痛感しました

松本が「嬉しいのと悔しいのと甘酸っぱい思いです。銅を受け止めて日本に帰りたい」と話しました。胸を張って帰国してもらいたいと思いますが、柔道選手個々の内面には、銅では済まない、日の丸を背負う重圧があり、五輪の戦いに臨む選手たちには、私たちには想像もつかない自己との戦いがあるのでしょうね。

それは〈五輪に棲む魔物は自分の内にいる〉とした体操の“絶対エース”内村航平(コナミスポーツ)が、いきなり鉄棒で落下したことにも表れたし、それを乗り越えた団体優勝の快挙は、観る側のこちらのほうが涙ぐんでしまうところがありました。

日本柔道陣は、大野の金獲得で弾みを得、残りの試合、縦横無尽の復活劇を見せつけてくれそうな気配です。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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