映画「恐怖の報酬」を観て・・・

映画関係者や一般の映画ファンが集まって開催される研修会の7月例会があり、上映されたフランス映画「恐怖の報酬」(1952年製作=1954年7月日本公開)を観(み)てきました。

日本で公開された1954年(昭29)当時、私はまだ10歳の小学生。そのとき、私が劇場に出かけてライブで観たとは思われないのですが、いつ観たのかは記憶に定かではないにしても、シャンソン歌手のイブ・モンタン(マリオ役)ら4人の男たちが、トラックでニトログリセリンを運ぶスリリングなシーンは、今なお、切り取られて頭の片隅にあり、展開に息を飲み、手に汗を握っていたこと、などを覚えています。

やはりこの研修会の会員である友人O君ともよく話すのですが、映画というものは、同じ映画を観ても10代、20代、30代・・・と年齢とともにそれぞれ、受け取り方が違ってくるものだねェ、とつくづく思います。

それはもちろん、自身が積み上げた経験や人生観の変化などで、あのときは陳腐に思えた映画の中の台詞が、実はこんな重さを持っていたのだ、とか、逆に若かったあの頃、興奮しまくったシーンが、歳を経てダサく、つまらなく思えたり、だから映画の感想は、100人観れば100人の、それぞれ別々の違った意見がある、ということなのでしょうね。

しかし・・・長い年月を経て再び観る機会を得た「恐怖の報酬」は、映画がそのままなのは当たり前のことですが、私の内面がどう変わろうと、ニトログリセリンを積んだトラックが爆発と背中合わせにオフロードを長距離走るという、いってみれば単純明快なスリル感は、永遠に変わることなく、私は以前同様、手に汗を握り、ハラハラドキドキの連続、観た後はグッタリするほどの疲労感さえ覚えていました。

そんな“罪つくり”を生みだした硬派のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督は、それ以前に手がけたのが、奔放な女に惚れて夢中になった実直な男の恋の行く末を描いた「情婦マノン」(1948年製作=日本公開1950年9月)であり、サスペンス映画の巨匠は、こうしたものもつくり上げていたんだ、とその引き出しの多さに少々、意表をつかれた感じでした。

時代を超えても不変~〈着眼と演出〉凄さ 

この映画に小難しい理屈はいりません。

ある日、油田で火災が発生します。石油会社は、これを鎮火させるためにニトログリセリンを利用、それを500キロ先の火災現場まで届ける、というシンプルな設定です。

道中は、トタン板状の細かい凹凸の悪路があったり、狭い山道にさしかかればトラックの向きを変えるのに大苦戦する難所にぶつかったりします。さらに行く先をふさぐ巨大な落石、あるいは送油管が壊れて油が溜まり、巨大な沼のようになった水(油)溜まりをどう切り抜けるか、荷台には、ちょっとした揺れ次第で爆発の可能性をはらむニトログリセリン・・・これでもか! とばかりにたたみかけるクルーゾー監督のスリリングな演出・・・。

一人2000ドルの報酬に食い詰めた男たちが群がり、その中から選ばれた4人の男たち~マリオ(イブ・モンタン)、ジョー(シャルル・ヴァネル)、ルイージ(フォルコ・ルイ)、ビンバ(ペーター・ファン・アイク)~が2人1組となり、ニトログリセリンを満載した2台のトラックを目的地に走らせ、立ちふさがる難関に挑む、という展開です。

結末は・・・ルイージ&ビンバが組んだトラックが難関を突破しながら、直後の気の緩みからかニトログリセリンを爆発させてしまい大破。マリオ&ジョーの組も目的地近くなってジョーが息絶え、2人分の報酬4000ドルを得たマリオも、その後のバラ色の人生を夢見ながら、帰路の山道で運転を誤り、崖下に転落して死んでしまう、という、相変わらずハッピーエンドでは終わらないフランス映画の面目躍如といったエンディングです。

映画を観終えて思ったことは・・・。

昨今、恐怖の場面、スリリングな場面などは、全盛のCG(コンピューター・グラフィックス)でより一層、リアルにつくることが出来、それが当たり前のように定着してもいますが、この「恐怖の報酬」を観る限り、優れた〈着眼と演出〉はCGを超えるものを生み出す、ということでした。

最近の映画も、こういうものをつくり出してもらいたい、と思いますね。
プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR